労働問題相談所

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悪質給与ファクタリング~見た目はファクタリング、中身は違法貸付

   

「給与ファクタリング」と呼ばれるサービスが問題視されています。
法人ファクタリングは、売掛金などを債権設定し、ファクタリング会社が買い取ることで、早期の現金化を実現させる資金調達方法です。

ここでは、悪質給与ファクタリングと、法人ファクタリングの違いについて解説していきます。

悪質給与ファクタリングと前借りの違いは、手数料の有無!

給与ファクタリングは、見方を変えると、給料の前借りに非常に似ています。違いがあるとすれば、手数料の有無ではないでしょうか。

給料の前借りの流れ

給料日前に2万円を次の給与分から前渡ししてもらう
⇒給料日に前借り分の2万円を差し引いた金額が支給される

例えば給与を20万円と仮定しますと、200,000円-20,000円(前借り分)=180,000円を、従業員は給料日に受け取る形です。
この流れの中には、手数料は一切発生しません。

ただし、上司や経理担当からの、「もっと計画的に使いなさい」「貯金をしなさい」などのお小言をいただくことはあり得そうです。

給与ファクタリングの流れ

ファクタリング会社より、利用者に給与が支給されることを確認
⇒給与を債権設定し、買取金額を利用者の口座に入金
※手続きによっては即日のファクタリングも!
⇒給料日に利用者が給与を受け取る
⇒利用者は給与をファクタリング会社に支払う

前借りの場合と同じく、給与を20万円としましょう。
ファクタリング会社より、給与の買取金額を、10万円と査定された場合、10万円が、利用者の指定した金融機関の口座に振り込まれます。

その後利用者は給料日に20万円の給与を受け取り、20万円をファクタリング会社に支払い、一連の取引の完了です。

この流れの中では、200,000円(本来の給与)-100,000円(利用者への前渡し金額)=100,000円が、ファクタリング会社の手数料と考えられます。

悪質給与ファクタリングと法人ファクタリング(2社間)の類似点

次に、悪質給与ファクタリングと、法人ファクタリング(2社間)の類似点を紹介します。

法人ファクタリング(2社間)の流れ

売上の発生(売掛金の発生)
⇒売掛金を債権として、ファクタリング会社に買取を依頼
⇒ファクタリング会社による売掛先の企業を含めた審査
⇒審査の結果、売掛債権の買取が決定
⇒ファクタリング会社は、売掛金の買取金額を依頼者の金融機関の口座に入金
※必要書類が準備できていれば即日のファクタリングも!
⇒依頼者による売掛金の回収
⇒依頼者は回収後の売掛金をファクタリング会社に支払う
⇒債権の消滅(取引の完了)

仮に100万円の売掛金を80万円で買取査定した場合、20万円がファクタリング会社への手数料と考えることができます。

金額の多寡はありますが、「売掛金」を「給与」に置き換えると、非常によく似た流れであることを理解していただけるのではないでしょうか。

悪質給与ファクタリングの利用者は債務超過?

悪質給与ファクタリングの利用者として想定されるのは、カードローンや消費者金融、そしてクレジットカードのキャッシングによる借り入れのある方です。
これらのお金の貸付には、総量規制が大きく関係しています。

総量規制とは?

総量規制とは、年収の3分の1を超える貸付を防ぐための法律(貸金業法)です。

年収 貸付限度額
※総量規制
2,000,000円 666,666円
2,500,000円 833,333円
3,000,000円 1,000,000円
3,500,000円 1,166,666円
4,000,000円 1,333,333円
4,500,000円 1,500,000円
5,000,000円 1,666,666円
5,500,000円 1,833,333円
6,000,000円 2,000,000円

そのため、カードローンや消費者金融の利用限度額や、クレジットカードのキャッシング枠は、上記の範囲内となります。

給与ファクタリングの利用者は、おそらく、カードローンなどの利用限度額ギリギリまで借り入れをしており、中にはその返済のために、給与ファクタリングを選択するケースもあるかもしれません。

総量規制の適用外となる貸付の種類

総量規制は、すべての貸付に対して適用されるわけではありません。総量規制の適用外となる貸付には、以下のようなものがあります。

・住宅ローン
・自動車や自動二輪(バイク)のローン
・不動産担保ローン
・高額な医療費で用いられる医療ローン

他にも、株式会社などの法人の借り入れに関しては、総量規制の適用外です。

給与ファクタリングの今後に関連する金融庁からの「ノーアクションレター」(法令適用事前確認手続)の回答

法人ファクタリング(2社間)は、売掛債権の「買取」が前提となるため、金融庁や都道府県知事への貸金業登録が義務付けられていません。

そのため、ヤミ金と呼ばれる違法業者がファクタリングを偽装した貸付をしているケースが見受けられます。

給与ファクタリングも、給与債権の「買取」であることから、貸金業未登録業者が参入していることが少なくありません。

金融庁は、給与ファクタリングにまつわるトラブルが増加してきたことから、ノーアクションレター(法令適用事前確認手続)に対する回答を発表しています。要約した内容は以下のとおり。

給与ファクタリングの利用の有無に関わらず、雇用主より従業員への給与の支払いがされることには変わりません。

給与ファクタリング会社が金銭を請求できるのは、利用者である従業員です。雇用主に請求することはできません。

給与ファクタリング会社からは利用者に対して金銭が支払われ、利用者からは、後日給与ファクタリング会社への返済が行われます。

この流れは、貸付から返済までの取引と捉えられることから、給与ファクタリングは貸金業として扱われるのが本来の姿ではないでしょうか。

参考資料
金融庁に法令解釈に関わる照会
(2020年2月28日)
金融庁における一般的な法令解釈に関わる書面照会手続(回答書)
(2020年3月5日)

給与ファクタリングの金利を計算~驚きの結果が!

給与ファクタリングを貸金業として扱った場合、これまでは「手数料」とされていた金額が、「金利(利息)」に変わることになります。

前述した20万円の給与を10万円で買取された例を、もう一度使用してみましょう。

5月15日に給与ファクタリングで現金化し、5月25日に返済の形で金利計算をしたところ、なんと「年3,318.181818182%」と算出されました。

参考資料「利率計算」

余談ですが、「年3,318.181818182%」を複利運用した場合、およそ7.91日で10万円が20万円になる計算です。

利息制限法で定められた上限金利

貸付金額 上限金利(利息制限法)
~99,999円 年20%
100,000円~999,999円 年18%
1,000,000円~ 年15%

貸金業登録を果たした事業者は、上記の上限金利の範囲内で貸付をすることが求められます。

それを踏まえると、「年3,318.181818182%」が、いかに異常な金利であるかがわかるでしょう。ちなみに金利「年3,318.181818182%」は、出資法違反にも該当します。

まとめ

ここまで、悪質給与ファクタリングと、給料の前借りや法人ファクタリングとの違いについて紹介してきました。

給与ファクタリングを利用しないのが一番ですが、もしカードローンなどの返済にお困りの際には、弁護士などの法律の専門家に相談することをおすすめします。

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