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ベーシックインカムって何?メリットとデメリットを分かりやすく解説

      2016/02/07

basic income

最近、ネットやニュースでよく見かけるベーシックインカム。
これは所得保障制度の1つで、なんとなく意味は分かっていても、メリットやデメリットを正確に把握している人は少ないのではないでしょうか?

ベーシックインカムは社会保障制度や生活のあり方を根本から変えてしまうほどの影響力を持っており、日本も将来に向けて検討すべきだともされています。

この記事では、ベーシックインカムとは何か。
そのメリットとデメリットはどのようになっているのか解説してみます。




ベーシックインカムとは何か?

ベーシックインカムとは、政府が国民の生活を最低限保障するため、年齢・性別等に関係なく、一律で現金を給付する仕組みのことです。

日本における現行の社会保障制度は、何か特定の事情が発生したときに給付される形で実現されています。健常で労働が可能な人は、基本的に社会保障制度の給付対象にはなりません。

例えば65歳を迎えると年金が、失業すれば失業保険が、生活できない人には生活保護があります。病気になると、健康保険から大部分の医療費が給付されるのも、社会保障制度の一環です。

このように、社会保障制度は特定の事情が生じて、生活に支障が出る、または負担が大きいときに補完する役割を持っており、誰もが平等に給付を受けられる制度ではありません。

ベーシックインカムは、これらの事情は一切考慮されず全ての人が平等に給付を受けられる制度になっています。

2016年1月にオランダで行われる実験

ベーシックインカムは、労働によって対価を得て生活するという、これまでの生活スタイルを完全に転換するものなので、その影響は非常に大きいと考えられており、メリットやデメリットは論じられても実際にどのようになるか結論は出ていません。

2016年1月に、オランダのユトレヒトという都市で、ベーシックインカムが実験的に導入されると発表されています。
この実験は、都市全体で行われるものではなく300人という限定的な規模ですが、その効果には注目が集まっています。

実験であるため、300人をいくつかのグループ分けして異なる条件で支給が行われ、無条件で支給されるグループには日本円で約12万円(妻帯者は約18万円)が支給されます。
その結果、人々がどのような行動をとるのか実験で明らかになると言われています。

フィンランドでのベーシックインカム導入は誤報?

先日、フィンランドで本格的に導入が決まったとニュースになりましたが、こちらは誤報とのことです。

今月、テレグラフやタイムズなど、伝統あるイギリスの新聞が、フィンランドで「ベーシックインカムの導入が決まった」と報じました。これは、誤報です。英字紙記者が、情報源のフィンランドの地方紙の記事を読んだ際に、フィンランド語の知識が十分ではなく誤解してしまったもののようです。
[参考]フィンランドでベーシックインカム導入と“誤報” 実際の進ちょく状況は?

しかし、上記記事内にも書かれてある通り、何らかの動きがあるのは確かなので、オランダの実験結果次第では導入されるかもしれません。

ベーシックインカムのメリット

ベーシックインカムは、少し聞いただけなら、所得の低い人や働けない人、もしくは働きたくない人にとって、夢のような話に感じるのではないでしょうか?

何事にもメリットとデメリットは付き物ですが、一見して現金のばらまきのように思えるベーシックインカムも、メリットがあるからこそ導入が検討されているのです。

残業代や給与問題がなくなる?

ベーシックインカムは、労働による所得の有無を問いませんから、支給される最低限の生活保障よりも豊かな生活を送ろうと思えば、働くことに制限はありません。逆に、支給額で生活ができるのなら、働く必要はなくなります。

それはつまり、生活苦から無理な残業をしたり、待遇が不利な非正規雇用でも働き続けたりする問題から解放されるということです。
生活保障はされるので、自分で必要なだけ労働していくスタイルを保てます。

残業代の未払い不当解雇による給与問題がなくなる(厳密に言うと支払わない事業者が減る訳ではありませんが)とされています。

ブラック企業が淘汰される?

ベーシックインカムによって、労働者は労働を選択できるようになり、苛酷な労働時間や賃金の未払いを行うブラック企業は、淘汰されていくと考えられています。
ブラック企業で働かなくても、支給されたお金で生活できるからです。

ただし、ベーシックインカムで支給されたお金は、その使い道も限定されません。
ということは、生活費に使わず浪費してしまう人も当然出てくるでしょう。そうなれば、生活するために労働するしかありません。

勉強やボランティアに時間を使うことができる

生活のために労働している人にとって、ベーシックインカムが導入されれば、働く時間が減り自由な時間が増えるのは確かです。
日本人は働き過ぎだと言われており、擦り切れるまで働いて迎える老後ではなく、充実した人生を送ることができるようになります。

勉強やボランティアなど自身が望む時間の使い方ができるようになります。

ベーシックインカムのデメリット

ベーシックインカムには批判も多く、それはデメリットが国を滅ぼしかねないと考えられているからです。デメリットに対する批判は、財源の問題、労働意欲の問題、経済的な競争力の問題に分けられます。

財源はどのように捻出するのか

ベーシックインカムが、多額の財源を必要とするのは間違いありません。一方で、日本の社会保障費は増加の一途を辿り、2013年度の総額は約110兆円で、そのうち医療の約35兆円を除くと、約75兆円が給付されています。

その全てが再分配されないとしても、1億2000万人に6万円を支給すると72兆円です。1人で生活するには不足しています。しかし、社会保障がベーシックインカムに一本化されることで制度上の効率は大きく上がり、削減されるコストを考えると、もう少し支給は上乗せできるかもしれません。

つまり、完全に生活できるレベルまで保障するには、税制で工夫が必要になり、何らかの仕組みを考えなくてはなりません。また、特に税を上げずにある程度までは可能なほど、日本の社会保障費は大きいと言えます。

税制による財源確保にはいくつか案があり、例えば、現在は最高45%の累進課税(所得に応じて税率が上がる課税方法)になっている所得税率を、収入に関係なく45%で固定するなどが考えられます。

しかし、低所得層が厳しくなるかというと、増税分よりもベーシックインカムによる収入が上回り、ベーシックインカムを必要としない高所得層は、元から高い税率で納税しているので、それほど影響はありません。

現行の社会保障費に、税制の変更を加えると、ベーシックインカムが全く実現不可能な話ではないとわかるのではないでしょうか。

働かない人が増える

ベーシックインカムで最も批判を受けるのが、働かない人が増えるという点です。
働かなくても生活できるのなら、誰も働く人などいないという論理なのですが、そう単純な結果にはなりません。

例えば、10万円の給料でギリギリの生活を送っている人が、ベーシックインカムで10万円支給されたとき、仕事を辞めてギリギリの生活を続けるでしょうか。むしろ、生活を豊かにするため、仕事を続けて20万円の収入で暮らしたいはずです。

では、100万円の給料で十分な暮らしをしている人が、ベーシックインカムで10万円支給されたからといって、仕事を辞めて10万円の生活を始めるでしょうか。こちらも答えはノーと言わざるを得ません。

ベーシックインカムによって、労働の一部は確かに失われるかもしれませんが、少しでも収入を増やしたい人は働くと考えられます。

経済競争力がなくなる

働く人が減って労働力が失われることによる産業の衰退、増税による物価上昇などで、ベーシックインカムが始まると、経済競争力がなくなるという懸念もあります。

労働力については、生活保障があることで、賃金が低くてもやりたい仕事を選び、嫌な仕事は敬遠されて賃金の上昇を招くといった現象も起こるでしょう。これまでよりも、賃金の高くなる仕事ではコスト高になります。

その代わり、賃金が低くなる仕事も生まれるのですから、こちらは生産力が高まり、バランスしだいだと言えます。

物価上昇については、税収をどこに求めるのかで変わり、法人税に求めると企業収益の悪化を伴い経済競争力は低くなりますが、個人所得税や消費税なら、物価上昇に直接つながる懸念はないはずです。

まとめ

年金の破綻や生活保護のほうが働くよりも高収入など、日本の社会保障制度はひずみが大きく、どこかの時点で変革をしなくては、少子高齢化・人口減少に耐えられないという指摘があります。

ベーシックインカムは大きな変革ですが、財源確保に課題も残し、その効果が未知数であるのは否めません。

しかし、現状維持では続かないのが明らかな以上、オランダの実験結果しだいでは日本も検討すべきでしょう。




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