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残業代請求の時効「2年」は引き伸ばし可能?過去の未払い残業代を取り戻す方法

      2016/05/26

agingovertime

未払いの残業代を支払ってもらえず悔しい思いをしていませんか?
または、もう辞めてしまってから、残業代がおかしいことに気付いたのではないですか?

残業したのに正しい賃金が支払われないのは、何の言い訳もできず違法行為です。それなのに、会社は知らないふりをして、時には解雇をちらつかせてくることすらあります。

ブラック企業による残業代の未払いはよく耳にしますが、最近ではブラックバイト・ブラックパートと言われる、時間給の労働者へも残業代を支払わないケースも多くなっています。

そんな不当な会社に負けてはいけません。あなたは働いたのですから、会社に請求する権利を持っており、証拠があってきちんと請求すれば必ず戻ってきます。

ただ、唯一心配なのは、未払い残業代の請求にも時効があるということです。思い切りが付かずに、いつまでも迷っていると、時効によって請求できなくなるかもしれません。

ですから、一刻も早く請求するほうが良いのですが、時効には中断されるケースもあるので、いつまでに請求するべきか確認してみましょう。

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残業代請求の時効は「2年」

労働基準法第115条では、退職手当を除く賃金が2年間の時効で消滅すると規定されており、この規定によれば残業代も2年で時効を迎えます。例外的には3年の時効を認めたケースもありますが、ほとんどは2年間だと思って間違いありません。

2年はいつからスタートするのか?

時効は「権利を行使することができる時から進行する」とされており、少し難しいのでわかりやすくすると、未払い残業代を請求できるときからスタートして、2年後に時効を迎えるということです。

では、未払い残業代を請求できるときとは、いつからなのでしょうか?

時効がスタートする時点を「起算点」といい、2年前の今日以降の給料日で支払われるはずだった未払い残業代は全て請求できます。

まだ、少し分かりつらいので例で説明します。

Aさんの例

Aさんの会社は、毎月25日に給料が支払われ、残業代も給料と一緒に支払われる規定になっています。2015年10月25日に支払日を迎える未払い残業代は、2年後の2017年10月25日に時効を迎えます。

つまり、2015年10月25日に支払われるべき残業代は2017年10月25日までに請求しないと、時効を迎え消滅してしまうことになります。

また、2015年11月25日に支払われるべき未払い残業代は、同じように2017年11月25日が時効の日で、翌月以降も同様です。毎月未払い残業代が発生するたびに、2年の時効も始まり、2年後から毎月時効で請求権が失われていきます。

事情によって3年の時効もあり得る

原則として、未払い残業代の時効は2年です。ただし、会社側に不法行為があって、不法行為に対する損害賠償として、3年の時効を適用させた過去の判例がありました。

この判例の不法行為とは、労働者の勤務時間を把握して、残業代を請求する手続きを行わせるべき義務を怠ったとしたケースです。会社が残業の存在を知っていて、残業代を支払わない通常のケースとは違い、会社は労働者の勤務時間すら把握しようとしていません。

可能性として、例えば残業があるのに残業にするなと強要したり、残業の記録を改ざんしたりと、不法行為に該当しそうな例では、時効が3年に延びるのかもしれません。それでも、個別のケースで変わるため、時効は2年だと思っておいたほうが無難です。

時効を停止(中断)する方法がある

未払い残業代の時効が2年間であることは、労働者にとってはかなり都合の悪い法律です。例えば、在職中は会社と争いたくないので、辞めるときに一括請求しよう!と思っていたら、時効が過ぎて請求権が無かった・・・なんて事があるからです。

しかし、どのような状況でも時効の進行を許してしまうと、2年間粘った会社の勝ちになってしまい、あまりにも不当です。そのため、時効には停止(中断)があって、次の3つが該当します。

  1. 請求
  2. 承認
  3. 差押え、仮差押え又は仮処分

時効の中断とは、一時停止ではなく、0に戻ることを意味します。これらの手続きで時効が中断されると、また最初から時効が始まるので早い段階で手続きを行いましょう。

なお、「差押え、仮差押え又は仮処分」とは、民事執行や民事保全という裁判所手続きによる処分で、普通は未払い残業代に関係してこないので扱いません。

したがって「請求」「承認」について詳しく解説します。

1.「請求」※全てが該当しない点に注意

一般的な言葉として、「請求」と言えば、相手に要求することですから、未払い残業代を会社に請求すれば、それだけで時効が中断するように思ってしまいます。ところが、請求とは裁判上の請求を意味していて、訴訟、労働審判、調停など裁判所手続きです。

口頭でも書面でも、単に会社に請求しただけでは請求にならず、裁判所に訴える必要があるということです。時効を止めるのは意外と面倒ですね。

では、自分で会社に請求することに効果がないかといえば効果はあって、自分で行う請求は、請求とは違い「催告」と呼ばれます。

催告でも時効中断の効果はある

催告には、時効を6ヶ月間成立させない効果があります。したがって、時効間近になって会社に未払い残業代を請求すると、6ヶ月間は時効になりません。証拠を残すため、内容証明郵便で行うのが確実です。

その代わり、催告には一時的な効果しかなく、やはり6ヶ月経過前に、裁判等で請求しなければ、時効は中断しないのです。時効まで時間があれば、催告をしなくても裁判所に訴えることはできますが、時効が近いときは、とりあえず催告することが大切です。

なお、催告の有効性で争った過去の裁判では、未払い残業代の金額や内訳が明示できなくても、勤怠記録などの算定の基礎になる資料は会社が所持しており、請求する労働者に具体的な金額や内訳の明示まで要求するのは酷だとして、特定日からの未払い残業代を支払えとだけ請求した、簡易な文書を催告と認めました。

分かりやすく言うと、金額が不明でもとりあえず会社に請求しておくことで時効は先延ばしにできる!と言うことです。タイムカードや賃金規定など、自分で証拠を揃えて請求するのが正しい手順ですが、難しくても時効を迎える前に請求しましょう。

残業代の請求方法はコチラで詳しく解説しています。

2.「承認」会社が未払い残業代を認めること

会社に未払い残業代を請求(催告)するとき、普通なら会社は「未払いはありません」と主張してくるでしょう。それならば、訴訟するなりして争うだけです。

その一方で、未払いがあることはわかったが、すぐに支払えないので分割にしたい、もしくは後日支払うので待ってくれなど、未払いの残業代を認めて交渉してきたとします。この場合は、承認に該当し時効が中断します。もちろん、未払い残業代を認めて、その一部でも会社が支払ったら承認です。

承認とは文字どおり認めることで、未払い残業代があることを会社が認めると、支払っていなくてもそれだけで時効が中断されます。承認で大事なのは、時効完成後の承認でも有効になる点です。

例えば、未払いの残業代が過去5年分あるとして、時効があるので請求できるのは2年分しかありませんが、試しに5年分請求してみたとします。会社側が時効を知らなくて、5年分の未払い残業代があることを認めれば、それだけで5年分の未払い残業代を請求できます。

要するに、既に時効でも相手が認めれば、請求権が復活することになるため、承認は請求する側にとって何としても得たいのです。しかし、そう簡単にはいかず、会社は未払いの残業代を認めてくれないでしょう。

時効の援用について

ほとんどの事例では、請求する側のほうで時効が経過したからと諦めてしまうのですが、実は時効という制度は変わっていて、次の2つを満たさなければ完成しません。

  1. 時効期間が経過した
  2. 時効が援用された

時効期間が経過しただけでは時効は不完全で、援用もされなくてはなりません。では、援用とは何かについて確認していきましょう。

時効の援用とはなにか?

時効の援用とは、難しく言ってしまうと「時効の利益を受けると相手に伝えること」を意味します。それではわからないと思いますので、簡単にするとしたら、会社が「もう時効ですよね」とあなたに伝えることです。

時効の利益とは、時効までの期間が経過して、会社が支払わなくてはならないはずの未払い残業代を支払わないことによる利益です。時効の援用は、会社が時効の利益を受けるのですから、会社からあなたに対してされます。

会社が消滅時効を援用しなければならない

時効期間が経過しても、会社が時効を援用しなければ時効は完成しません。したがって、労働者にはまだチャンスがあるとも言えるのですが、未払いの残業代を発生させるような会社は、2年の時効があることを知っています。そして、時効の完成には援用が必要なことも恐らく知っているでしょう。

そのような会社が、自ら未払い残業代の存在を労働者に知らせることなど考えられず、じっと時効になるのを待っているはずです。労働者が請求しなければ何もせず、もし請求されたときは時効を援用してくるのが常套手段です。

労働者としては、時効になっていると知っている未払い残業代でも、一旦は請求してみるべきでしょう。請求して会社が時効の援用をしてきたら、それは諦めるしかないですが、運よく承認してくれたら取り戻せる金額が増えるからです。

まとめ

未払い残業代の時効が2年なのは、法律で規定があるだけに、どうしようもないと考えがちです。しかし、時効だからと自分で判断して諦めてしまってはいけません。

催告で2年を超えることができたり、不法行為とみなされて3年になったり、会社による承認があって時効が中断したりと、2年が絶対ではなく、2年を過ぎても未払い残業代がなくならないケースもあります。

自分で判断できなければ専門家の助けを借りるなどして、請求できないか模索してみましょう。一番悪いのは泣き寝入りです!

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