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みなし残業制でも残業代請求可能!違法残業のチェック方法と計算方法

      2018/03/22

みなし残業

月140時間残業のブラック企業から500万円の残業代を取り返した方法

この記事に目を留めて下さった方の中には、

「自分の会社のみなし残業は違法ではないか」
「みなし残業で働いているけれど、もっと残業代がもらえるはず」
「みなし残業内で残業代がおさまっていない」

などお悩みを持っている方は多いのではないでしょうか。

また、みなし残業制だと長時間残業をしても残業代はもらえないと思っている人もいるかもしれません。
「みなし残業」はよく耳にする制度ですが、働いている当事者の方も、詳しくご存じでない可能性があります。

そこで今回のコラムでは、みなし残業とはなんなのか、みなし残業でも残業代を支払ってもらえるケース、みなし残業制でも残業代を請求するための方法などについて解説したいと思います。

1.残業代請求に強い法律事務所に相談する

2.みなし残業(固定残業)とはなに?

「みなし残業」は、残業を実際にしたかどうかに関係なく一定の時間は残業をしたとみなして、賃金に残業代が含まれる制度のことを言い、「固定残業」ということもあります。

みなし残業の制度を採用している会社では、みなし残業時間とする一定の残業時間については、労働基準法上の割増賃金(週40時間を超える時間外勤務)や、休日・深夜の割増賃金は支給対象外としているところが多いです。

ただし、みなし残業制度を採用している会社でも、一定時間を超えて残業した場合は、その分の残業代を会社は支払わなくてはいけません。
しかし実際は、みなし残業を理由に超過分の残業代も払わない運用が横行しており、社会問題の一つになっています。

3.みなし残業の上限は何時間?

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「みなし残業」という言葉はよく聞きますが、実はこれは法律上の言葉ではありません。
みなし残業時間の上限も法律で決められているというわけではなく、最低賃金を上回るみなし残業代がきちんと支払われていれば、その月の残業時間に問題はありません。

ただし、法定労働時間を超えて残業をする場合に、会社と労働者が締結する36協定の上限は1か月45時間、1年間で360時間です
これを超えると労働基準法に違反している可能性があるので、みなし残業時間の上限を月45時間としているところが多いと言われています。

4.違法なみなし残業を見分ける5つのチェックポイント

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会社は、労働基準法の範囲内で独自に就業規則を決めることができます。
そのため、みなし残業制度を採用していても、それだけで違法になるわけではありません。

裁判でも、労働基準法上の割増賃金以上のみなし残業代が支払われていれば違法ではないと判断されたケースがあります。

しかし、実際は、みなし残業制度を会社が恣意的に利用するなどの違法なみなし残業が行われているケースは少なくありません。
どのようなケースが違法なみなし残業になるのか、次の5項目でチェックしてみましょう。

(1)みなし残業代の金額や時間が示されているかチェック

みなし残業制度は、会社と労働者が結ぶ雇用契約の中でも大切な要素です。
そのため、会社がみなし残業制を採る場合には、そのことが労働契約の内容に含まれていなければいけません。

具体的には、契約書にきちんと示されているか、就業規則に明記して周知されている必要があります。
「基本給が何円、みなし残業代が何時間分で何円」というように、基本給とみなし残業代を区別して判別できるようになっていなければ、違法です。

(2)労働時間が一定時間未満でもみなし残業代が支払われているか

みなし残業代は、実際に残業したかどうか、また残業した時間の短さにかかわらず、一定時間分の賃金を会社が支払うものです。

しかし、現実的には、一定時間以上働かないとみなし残業代が支払われないどころか、逆に給料を下げるような運用をしているブラック企業と呼べるような悪質な会社もあります。

労働者側としては、給料が下がることを恐れて、みなし残業代が払われる時間まで働かざるを得ない状況に追い込まれがちですが、そもそもみなし残業代は、残業時間が短くても一律で払われるものです。

決まった時間を残業しないと、会社がみなし残業代の支払いをしないといった運用は違法なので、給与明細などを確認してみることをおすすめします。

(3)一定時間を超えた残業代は別途支払われているか

みなし残業は、実際の残業時間にかかわらず、一定時間についてはみなし残業代が支払われるものですが、その一定時間を超えて残業をした分については、会社は別途追加して残業代を労働者に支払わなければいけません。

しかし、実際は超過で残業しても、「みなし残業制だから追加の残業代はない」という運用をする会社が多いのが実情です。
これは違法な運用なので、もし会社がこのような対応をしている場合は弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

(4)みなし残業代が最低賃金を上回っているか

みなし残業代が最低賃金を下回っている場合は、違法です。

最低賃金は地域によって異なり、平成29年は、最高額の東京958円から最低額の高知県等8県737円まで差がありますが、全国平均でみると848円となりました。
とすると、時間外労働では1.25を乗じた1,060円が最低水準ということになります。

例えば、「残業手当3万円(月40時間分)を含む」と記載されているケースでは、時給750円になり、これは違法な料金設定です。
このような条件で働いていた場合は、これまでの不足分を請求することも可能です。

(5)みなし残業制度が周知されているか

みなし残業は雇用契約の大切な要素なので、従業員が知らない間に会社が勝手にみなし残業制に変更するような運用は違法です。

途中からみなし残業制に変更する会社では、従来の基本給はそのままに、給料の一部をみなし代とするところが大半です。

具体的には、従来の基本給が20万円の場合に、基本給15万円・みなし残業代5万円として、実質的な金額は変わらないという説明をする会社が多いのですが、一定時間以上残業するような場合には受け取る金額は減ることになります。

途中から会社が恣意的にみなし残業制に変えていないか、気をつけてみましょう。

5.みなし残業にメリットはあるの?

ここまで見てくると、みなし残業にはマイナス面しかないようにも思えます。
しかし、みなし残業制は、労働者にとって次のようなメリットがあるのも事実です。

  • 実際に残業をしなくても残業代をもらえる
  • 残業時間を減らせば減らすほどメリットが大きくなるので、仕事を効率化できる
  • みなし残業時間を超えて残業した時間については別途残業代を受け取ることができる
  • 毎月、残業代を含む固定収入を確保した上で、超過した残業代も請求できる

とはいえ、上記のメリットは、みなし残業制度が適正に運用されている場合の話です。

実際には、みなし残業制度は、会社側のメリットのために利用されることが多いのが現実です。

会社側のメリットとしては、固定給を高く見せつつ基本給を低額に抑えたり、残業代計算の事務処理が簡単になるといったものがありますが、中には故意で超過残業代を払わないケースもあるので注意が必要です。

6.みなし残業でも残業代を請求できる場合と必要な証拠とは?

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みなし残業でも、残業代を請求できる場合は2つあります。

一つは、適法なみなし残業が採られているケースで、みなし残業時間を超える時間を残業したような場合です。
具体的には、「残業手当3万円(月20時間分)を含む」という契約内容で、月25時間残業した場合には、超過した5時間分について、別途残業代を請求することができます。

もう一つは、会社が採っているみなし残業制度自体が違法な場合です。
そもそもみなし残業自体が認められないため、残業した全時間分の残業代を会社に請求することができ、「みなし残業代」とされた賃金も基本給に加えて残業代を計算することができます。

ただし、残業代を請求するためには、次の3つの証拠が必要になります。

(1)みなし残業や給料について書かれた書類

雇用契約書や就業規則など、給料や雇用の関係について記載された書類を集めましょう。
基本給が何円か、みなし残業代が何時間で何円か、が明確に記載されているかどうかが、みなし残業の有効性を判断する基準になります。

また、未払いの残業代がある場合は、残業代を計算する根拠にもなる大切な書類です。

(2)実際の労働時間が分かる書類

タイムカードや出退勤のデータは、実際の労働時間を証明し、残業代を計算する根拠になるので保存しておいてください。
タイムカードがない会社の場合は、出退勤時間が分かるような日報・日誌や、業務で送受信していたメールのやり取りなども証拠として利用できます。

(3)支払いの実態がわかる書類

給与明細など、実際の支払金額が分かる書類は、みなし残業が違法かどうかを判断する証拠になると同時に、残業代計算でも必要になります。
完全固定の給料の場合でも、多少の変動がある場合でも、一定期間の給与明細などを揃えられると安心です。

7.みなし残業で未払い残業代がある場合の計算方法

みなし残業で未払い残業代を計算するには、次の3段階で計算をすることになります。

(1)基礎時給の計算

基礎時給は、残業代の計算のベースになる金額で、次のように計算します。

  • 基礎時給 = (月給-みなし残業代-手当) ÷ (月平均所定労働時間)

ここでいう月給とは「月給25万円(残業手当5万円(月40時間分)を含む」とされていた場合の25万円のことです。
手当には、月給からマイナスするものとしなくて良いものがあります。
月平均所定労働時間は、月の労働日数×8時間で計算します。

(2)本来の残業代の計算

本来の残業代とは、みなし残業制に関係なく発生している残業代のことで、次のように計算します。

  • 本来の残業代 = 基礎時給 × 割増率 × 残業時間

割増率は、法定外労働(1日8時間以上の労働時間)の場合は1.25、時間外に深夜労働をした場合には1.5、休日労働した場合は1.35など、残業時間によって異なります。
まずは概算で計算したい場合には1.25で計算しておくとよいでしょう。

(3)未払い残業代の金額の計算

最後に計算するのが、未払い残業代です。

  • 未払い残業代 = 本来の残業代 - みなし残業代

みなし残業代は、「月給25万円(残業手当5万円(月40時間分)を含む」とされた場合の5万円のことで、既に支払われているのでこれを引いて計算します。

8.みなし残業制度の会社でも未払い残業代を請求するための4つの方法

みなし残業制度の会社でも残業代を請求できるとなっても、いきなり裁判を起こすのは適切な方法ではありません。

とはいえ、残業代の請求は2年で消滅時効にかかるので、請求できる場合には早めに対応することが大切です。
未払いの残業代がある場合には、次の4段階で請求することを検討してください。

(1)内容証明郵便で請求書を送付する

未払いの残業代を請求するには、まずは会社に内容証明で請求書を送付しましょう。
内容証明郵便は、郵便局が書面の内容を証明し、時効を一時的にストップさせる効果もあります。

ただ、会社は大きな組織なので、労働者個人が内容証明郵便を送っても太刀打ちできない恐れもあります。
そのような場合は、弁護士に依頼して、弁護士の名前で会社宛に内容証明郵便を送ると会社に本気度が伝わり、会社が支払いに応じることもあります。

(2)労働基準監督署に相談・報告する

労働基準監督署(以下「労基署」といいます)に相談しても、労基署が代わりに残業代の請求をしてくれるわけではありません。
しかし、労基署に相談することで、以下の2点の効果が期待できます。

①是正勧告

会社が残業代を未払いで残業をさせていることがわかると、労基署は会社に「是正勧告」を出し、それでも会社が是正しない場合は、書類送検され罰を受ける可能性もあります。

②付加金

裁判所に未払い残業代の請求をする際は、「付加金」といって未払い残業代の同額を会社に請求できます。
会社は、2倍の付加金を支払うような裁判になることを避けるために、任意で未払い残業代の支払いに応じる可能性が高まります。

(3)労働審判

労働審判は、裁判官と2名の労働審判員が審理する手続きで、通常の裁判よりも迅速な解決が期待できる制度です。
通常2か月半~4か月程度という短い期間の解決が期待でき、口頭での審理が行われるという特徴があります。

裁判に比べて負担が小さくて済み、非公開で行われるのでプライバシーが守られるメリットもありますが、複雑な事案や、審理に異議がある場合には通常の訴訟に移ることになります。

(4)訴訟提起

会社側との話し合いが決裂し、労働審判でも同意に至らない場合は、裁判を行うことになります。
訴訟になると、解決までに6か月から1年くらいの期間がかかることもあります。

時間と負担はかかりますが、判決で残業代だけでなく、残業代と同額の付加金の支払いが命じられる可能性があること、会社は判決には必ず守らなければならないという強い効力があるというメリットがあります。

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まとめ

今回は、みなし残業が違法かどうか知りたい方や、未払い残業代があるか知りたい方のために、請求方法などを解説しました。
実際に会社に請求するとなると、負担が大きく躊躇する方もいるかもしれません。

弁護士に相談、依頼すれば、計算や証拠の収集、やり取りも全て弁護士に任せることができるので安心です。
まずは弁護士にお気軽に相談されることをおすすめいたします。

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