労働問題相談所

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未払い残業代請求で必要とされる証拠一覧

      2016/10/03

zangyo3

未払いになっている残業代を請求しようと考えた際、「何を証拠として提示したらいいんだろう?」と悩んでしまいますよね。

自分が悪いわけでもないのだから、証拠なんて用意せずに請求すれば払ってもらえるはず…そう考えているのなら、相当考えが甘いです。会社が「そうですね」と払ってくれることなどないでしょう。

単にミスで払われてなかった場合や、良心的な会社なら請求するだけで支払ってくれますが、未払いにする会社は「わざと」支払わないからです。

この記事では、未払いの残業代を取り戻すために、揃えなくてはならない証拠に注目して解説していきます。証拠が重要なのは、言い分が食い違ったときに会社の主張が間違っていると言えるからですよね。

証拠の中でも大切なのは、残業があった事実を証明できる勤務記録で、出退勤簿やタイムカードなどが該当します。
その他にも、労働契約上でどのくらいの賃金が支払われるべきかわかる、就業規則や賃金規定が必要です。

ところが、こうした勤務記録などは在職中でも確保が難しく、ましてや退職後では非常に手に入れるのが困難です。そこで、可能な限り在職中にできるだけ多くの証拠を残しておくのが、未払い残業代の請求ではとても大切になります。

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残業代が未払いになっていると立証しなければならない

自分で未払いの残業代があると気付いたとして、それはなぜ気付いたのでしょうか?
恐らく多くの場合、今月はこのくらい残業したから、給料はこのくらいのはずだと思っていたら、思ったより少なかったからでしょう。

自分が何時間残業したと知っていて、残業代が本当はいくら支払われるべきか知っていれば、未払いになったことは簡単にわかります。だからこそ、会社に残業代がおかしいと言うことができます。

では、未払いがあるかどうかわからない、でも未払いがあったら支払ってくださいと会社に言ってみるとします。マトモな会社なら、調べてくれるかもしれませんが、意図的に残業代を未払いにするような会社では門前払いです。

つまり、未払いの残業代を請求するなら、請求する側が未払いの存在を立証しなければなりません。

払ってないのは会社なのになぜ?

悪いのは会社なのに、なぜ自分が未払いの残業代を立証しなければならないのかと思ってしまうでしょう。その気持ちは十分にわかりますが、残念ながら請求する側に立証責任があるのは、争いごとでは常識の範囲なのです。

例えば、あなたが貸してもいないお金を、ある日いきなり請求されたとします。身に覚えがないので、あなたは貸していないと主張し、相手は貸したと言い争っているうちに、「証拠をだせ!」という話になるはずです。

これは良くある話で、請求するならその根拠となる証拠を用意しなくては、相手は証拠もないのに何も応じてくれません。
未払いの残業代は、間違いなく会社の違法行為で責任も確実に会社側にあるのですが、それでも未払いの残業代があることを立証できなければ、ただの言いがかりになってしまうからです。

客観的な証拠が必要

残業したことを示す証拠は、すでに説明したように勤務記録となり、残業代がいくら発生しているかは賃金規定から、未払いがいくら発生しているかは会社が発行した給料明細などでわかります。

これらの証拠は、第三者がその記録を見ても、十分に未払いがあると考えられる客観的な証拠です。
しかし、自作の給料明細を証拠として未払い残業代を請求したとき、自分が第三者なら、自作の給料明細を信じられるでしょうか?

客観的な証拠とはそういうことで、第三者でも判断材料に使えるものを言います。しかし、全ての証拠が自作ではダメということではありません。
例えば、出勤簿に毎日自筆で記入しているとして、その記録は偽造も疑われますが、上司のハンコをもらっていれば、自分以外の人が関わって了承している立派な証拠です。

また、完全に自作の証拠でも、全く証拠として使えないかというと、そうとも限らないのです。
詳しくは後述しますが、どうしても証拠が揃えられないのなら、自作でも何でも記録に残しておくことが重要になります。

必要とされる証拠

未払い残業代の請求で必要な証拠は、大きく分けると次の2つになります。

  • 残業があったことを証明できる証拠
  • 残業が未払いであることを証明できる証拠

これはわかりやすいですよね。残業があって、なおかつ残業代が支払われていない・不足している場合しか、請求できる根拠がないからです。

また、実際に支払われた給料については、給料明細で証明できますし、給料が振込なら振込口座の記録を追えばわかるため、ほとんど問題になることは無いでしょう。

しかし、残業があったことの証拠と、本来支払われるべき残業代を計算するための証拠は面倒です。証拠になりそうな記録はいくつかあるとしても、現実的に手に入れるのが困難な場合も多くあります。特に困難なのが、会社管理になっている記録です。

雇用時に渡された書類(雇用通知書、雇用契約書など)

名称は統一されておらず、雇用通知書、雇用契約書の他、労働契約書といった名称も使われます。いずれにしても、内容は会社と労働者の間で結ばれる、労働契約に関する内容です。

労働契約においては、労働条件を労働者に明示しなければならないと労働基準法で定められています。

労働基準法第15条第1項
使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。
[参考]労働基準法

具体的には、労働基準法施行規則第5条で定める、次のような内容が含まれるはずです。

  • 雇用期間(期間に定めがあれば更新の有無)
  • 就業の場所と従事すべき業務
  • 始業時刻と終業時刻、残業の有無、休憩時間、休日など
  • 賃金に関する内容(金額、支払い方法、支払い時期など)
  • 退職に関する内容
  • その他(退職金、賞与、その他必要な事項)

これらは書面で交付しなくてはならず、違反した場合の罰則もあります。それでも、雇用時に書面を発行しない会社は多いです。

雇用時の書面があると、労働条件が記載されているので、正しい就業時間や給料について信頼できる証拠となります。持っている場合は、無くさないように保管しておくことをおススメします。

とはいえ、雇用時の書面がなくても労働契約が無効になることはありません。口頭でも契約は成立しますので、約束された残業代に未払いがあれば、当然に請求することができます。

雇用時の書面がないとき

一番良いのは、現在の労働条件と、その労働条件がいつから始まっているか、会社側と確認した同意書などを取り付けることですが、作ってくれないとき、もしくは雇用時の書面を無くしてしまったときはどうすれば良いのでしょうか?

雇用契約書等の書面は、2通作って1通ずつ保管するのが普通なので、無くした場合は会社に言って、写しをもらえば大丈夫です。しかし、最初から無い場合は少し面倒になります。

勤務している事業所に就業規則があれば、大体において代用できますが、過去にメールで雇用時の労働条件のやり取りがないか、もしくは同僚に実態を証言してもらうことができないかなど、あらゆる手を探してみましょう。

就業規則

就業規則は、絶対に作成することが義務付けられているものではなく、労働者が10人以上の事業所単位で作られ、労働基準監督署に届け出ます(10人以下でも作っている会社はあります)。したがって、会社がある程度の規模になると就業規則はあるはずです。

就業規則に書かれているのは、雇用時の書面に書かれるべき内容と重複しますが、労働者全体に対して適用される内容として、職務規定などの社内ルールも書かれているのが特徴です。また、雇用形態が変われば労働条件も変わるため、雇用形態別に就業規則が作られているのが通常です。

就業規則は常時備え付けておき、労働者に周知させなければならない義務があります。ところが、就業規則を見た記憶がない人は多いように、実態として会社が保管しているだけで、労働者が見られる状況になっていないことも多いです。

就業規則がある勤務先(10人以上同じ事業所で働いている会社)なら、雇用時の書面と同じような内容が含まれているので、会社に言って見せてもらいましょう。コピーさせてもらえると一番良いのですが、不審に思われるかもしれません。

就業規則が手に入らないとき

本来は労働者に周知させる必要があるのですから、コピーを取っても問題ないように思えても、残業代を未払いにするような会社では嫌がります。特に会社との関係が悪化していると、ますます嫌がられますので、借りたら内緒でコピーや写真に撮るなどしましょう。

最初から就業規則を作っていない小さな事業所では、雇用時の書面で対応するしかなくなりますが、10人以上の職場で、就業規則があるはずなのに見せてくれない場合は、労働基準監督署に問い合わせてみることです。

就業規則を労働基準監督署に届け出ていないと、それだけで労働基準法に違反するので、普通の会社なら届け出ています。ただし、労働基準監督署が就業規則を見せてくれるとは限らず、事情と労働基準監督署の対応次第です。

そもそも、周知させるべき就業規則を、労働者に見せない時点で労働基準法違反ですが、そのこと自体を取り上げることに意味はありません。目的は未払い残業代を取り戻すためなので、労働基準監督署に状況を話せば、就業規則に違反していないか確認くらいはしてくれるのではないでしょうか。

退勤時間が分かるもの

未払い残業代の請求をするための証拠で、最も入手困難なのが退勤時間(出勤時間が固定でなければ出勤時間も含めた勤務時間)です。勤務時間の記録方法は、会社によって全く異なり、代表的なのは打刻式のタイムカードですが、手書きだったりデジタルデータだったりと様々です。

理想的な入手方法は、会社側に申し出て退勤時間(勤務時間)が記載された資料をコピーさせてもらうことで、会社にコピーしたいと言っても、不審に思われるばかりか、断られるのがオチでしょう。

ですから、未払い残業代を取り返したいと思った時点で、事前に自分でコピーを取っておく対策が必要なのですが、それも難しい場合には、次のような方法を考えます。また、悪質な会社は、タイムカードを定時に打刻させて残業させるので、その場合にも別途証拠を考えておかなくてはなりません。

メールは送信履歴が残るので有力

退勤する際に、会社のパソコン(なければ自分の携帯電話等)から、帰宅する旨のメールを外部にしておきます。
会社のパソコンを使うことができれば、少なくともその時間には会社にいたことを証明できるからです。入手可能なら、パソコンのON/OFFを記録したログデータも役に立ちます。

特に、業務報告を退勤前のメールで行っている場合には、そのメールを印刷しておくか、自宅のパソコンなどにも送っておくだけで、十分な証拠になるでしょう。

一方で、自分の携帯電話からメールするのは、帰宅していてもできることなので、証拠能力は低くなりますが、継続して家族などに送っておけば、メールは履歴が改ざんできないので、ある程度は使えます。

メモの証拠能力は低い

退勤時間を手帳などにメモしておくことも、他に手がなければしておくべきです。ただし、自筆のメモは自由に作成できることから、証拠能力として低いのは当然です。会社のパソコンで作った退勤記録の印刷も、同じ理由で証拠としては苦しくなります。

要するに、改ざんできる証拠は、客観性が低いと判断されるのです。メモするとしても、一度に作ってはなおさら意味がないので、時々筆記用具を変えるなどして、いかにも毎日メモされたことがわかるようにしておきましょう。

また、通勤に使っている鉄道のICカードの履歴を印刷しておく、会社近くのコンビニで買い物してレシートを取っておくなど、会社にいたと推測できる証拠を複合的に用意しておくことで、少しでも証拠として有力にすることは可能です。

一緒に残業している同僚がいる場合

複数人で残業しているときは、同僚に証言してもらうことで、退勤時間を証明することは容易です。しかし、他人の退勤時間を毎日に覚えている人は少ないですし、退勤が一緒になるとも限りません。

そこで、メールやメモに退勤時間を残す場合は、何時まで誰と一緒に残業していたか同時に記録するようにします。後で見返したときに、一緒に残業した同僚のほうでも覚えていれば、より客観性が増すからです。

きちんと残業中に仕事をしていた証明

退勤時間が確かで、残業代が発生しているとしても、仕事目的ではない居残り時間まで会社が賃金を支払う義務はありません。

例えば、飲食店の営業時間内なら、客がいなくても待機時間は業務ですし、長距離ドライバーのように、目的地への妥当な到着時間は運転していたと推測できるので、状況から業務しか考えられない職種では勤務時間の証明だけで足ります。

しかし、デスクワークなど多くの職種では、机に座っているだけなのか仕事をしているのか区別は付かず、業務で残っていたと推測できる証明を必要とします。それでも、具体的に何が何時間…といった証明までは不要で、仕事をしていたとわかる範囲で大丈夫です。

会社から指示や承認があれば確実

残業が業務と判断されるかどうかは、労働者が会社の指揮命令下にあるかどうかで判断されます。指揮命令下を判断する1つの基準として、絶対的な証拠となるのは、会社による指示や承認です。

残業するたびに指示や承認をする会社は少ないですが、人件費の削減から残業を制限するために、上司の承認を義務付けていたり、退社時間が近いのに仕事を頼んだりと、何か会社側のアクションがある状態なら、必ず記録しておきましょう。

メールや書面で残っているのがベストで、何月何日に誰の指示(もしくは誰の承認)であるか、どのような業務を行ったかメモしておくだけでも、相手がいる記録なので有効です。

自分の意思で行う残業は状況次第

ほとんどの残業は、業務上やむを得ない理由で行われていると考えられますが、中には残業代を稼ぐために意図的な残業も行われていることは否定できません。会社が指示・承認している残業以外で、何も指示されていないのに進んで行う残業はどうなるのでしょうか?

残業というのは、所定時間以外に行う例外的な労働であることから、理由が必要となるのは当然です。残業しなくても、翌日の通常勤務で行えば十分間に合う仕事や、私的な理由で残っているだけでは、残業は当然に認められません。

しかし、会社が指示していなくても、就業時間内で終わらない業務量という状況は多いですし、残業を制止せずに黙認している状況は、会社側にも責任がないとも言えないでしょう。
さらに言えば、残業代を未払いにする会社は、残業していることを知っていて放置します。

そこで、残業時間に何を行ったか記録し、それをメールかメモに残しておきます。何時から何時まで何を行っていたか詳細にあるほうが好ましいですが、そこまでしなくても、嘘の業務でなければ十分です。

複数人の残業と持ち帰り残業

上司や同僚と一緒に残業しているなら証明は難しくなく、証言や書面としてその旨を残してもらえば、残業中に業務をしていた証拠になります。では、仕事を持ち帰って残業した場合は、残業として認められないのでしょうか?

本来は会社で行うべき業務を持ち帰って行う場合、合理的な理由を必要とします。合理的な理由とは、会社から指示されて持ち帰る、仕事が残っているのに退社を強制される(建物が閉ざされる)、退社しなければ帰れなくなるなど考えられます。

いずれにしても、持ち帰り残業をしないと間に合わない業務をさせている事実を、会社側が認識していることが大切です。
残業時間が不明瞭になって証明が困難ですから、業務量に応じた妥当な残業時間を、都度報告して承認を受けるくらいの慎重さが必要でしょう。

証拠が不十分な場合

ここまで長々と必要とする証拠を書き記してきましたが、全て用意するのは困難な場合がほとんどです。

未払い残業代の請求に必要な証拠は、その多くが会社管理で労働者が得られる証拠は一般に少なく、未払い残業代が発生しているか確認することもできないケースがあります。特に退職後であれば、なおさらのこと証拠集めは絶望的です。

就業中の場合でも、就業規則のように法律で周知が定められている証拠は入手が容易ですが、肝心の出退勤記録は会社が開示してくれることは少ないでしょう。
勤務記録がないと、そもそも残業代が計算できなくて困ってしまいます。

このように、一人で会社と戦っても解決できないときは、専門家である弁護士に相談して力を貸してもらうことも考えてみるべきです。
未払い残業代が大きければ、弁護士への報酬も十分に支払えますので、何も得られないよりは良い結果に繋がるからです。

まとめ

未払い残業代の証拠集めは、未払いがあると発覚した時点で入手が困難になっていることも多いです。
それは、給料が前月の残業に対して支払われるからで、前月の勤務記録を手に入れようとしても会社管理になっていてなかなかできません。

しかし、今月も翌月も未払いになる可能性は高く、常に請求することを考えて証拠を残す努力をしておきましょう。悪いのは会社ですが、自分では何もしないで未払いの残業代を払えと言っても難しいです。

証拠には、「1つで証拠として十分なもの」「1つでは不足しても複数が補完することで、証拠として扱われるもの」があるので、自分で判断せずに、とりあえず証拠になりそうなら何でも集めておく心掛けが大切になります。

また、証拠が十分にある方は下記のページを参考に自分で残業代を請求申請をしてみるのも良いかもしれません。

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