労働問題相談所

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残業代が出ない場合の必ず残すべき5つの証拠と対処方法

   

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月140時間残業のブラック企業から500万円の残業代を取り返した方法

このコラムをご覧いただいているあなたは、会社で残業代が出ずに困っている、残業代を請求したいけれど会社と揉めて退職するのは避けたい、と考えているのではないでしょうか。
従業員が決められた労働時間を超過して働いている場合、会社は残業代を出さなければいけませんが、違法なみなし残業やサービス残業をさせるなどして、従業員に残業代を払わない会社も少なくありません。

従業員はこのような会社に対して残業代の支払いを請求できる権利をもっていますが、

「残業代を請求するためにはどんな証拠がいるのか?」
「在職中にできる準備はなんなのか?」
「残業代を請求して会社と揉めて退職に追い込まれるのは困る」

等々、残業代が出ない場合の対処法についてお悩みの方もいらっしゃると思います。

そこで今回は、今すぐでなくても、残業代を請求する場合に備えて知っておきたい証拠や対処方法について解説します。

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1.働き方で違いが出る?残業代が出ない場合に確認すべきこと

原則として、1日8時間または週に40時間以上の勤務をしていれば、残業代を請求することができます。
この時間を「法定労働時間」、これを超えた労働時間を「法定外労働時間」といい、法定外労働時間について、割増した残業代が支払われることになります。
残業代が出ない場合には、まずご自身の働き方に応じて、残業が残業代の支払い対象になるかどうかをチェックすることが大切です。

(1)残業代が出ないよくある5つのケース

①持ち帰り仕事のケース

定時で仕事が終わらず自宅に持ち帰って仕事をする場合も、会社の指揮命令があり、実際自宅で何時間働いたのかを証明できれば、残業として残業代を請求できます。

②残業時間切り上げのケース

残業は1分単位でカウントするので、残業代がいくらになるかを算出するとき、残業時間を10分切り捨てとするような処理は違法です。
毎日の残業時間の端数を切り捨てる処理は違法ですが、1か月の合計残業時間については、30分未満の労働時間を切り捨てて、30分以上の労働時間を1時間に切り上げる処理は認められます。

③フレックスタイム制のケース

フレックスタイム制は、従業員が決まった労働時間内で出社・退社時間を決められる制度ですが、この場合も合計労働時間が、法定労働時間を越えた場合は残業代の対象になります。

④みなし残業のケース

みなし残業、固定残業は、予め一定の残業代が基本給の一部として含まれているものを言いますが、何時間分の残業代を含むかを決めておかなければならず、この時間を超えて働いた分については別途残業代が発生するので請求できます。

⑤管理職のケース

労働基準法という法律では、管理監督者には残業代を払わなくていいと決められていますが、この管理監督者と管理職はイコールではないので、会社で残業代を出していなくても実は残業代を請求できる管理職の方は少なくありません。

(2)残業しても残業代が出ない場合

残業の基準には、法律で決められているものと、会社で独自に決められているものがあります。
原則1日8時間または週に40時間という法律で決められた労働時間が「法定労働時間」、会社で1日の労働時間を8時間とするというように決められた労働時間が「所定労働時間」で、名称は似ていますが意味が異なります。

所定労働時間を超えて働いても法定労働時間内であれば、その時間については割増にならない残業時間を請求できるにとどまります。
逆に、所定労働時間内であっても、法定労働時間を超えて残業して働いた場合は、残業代(割増したもの)を請求できます。

残業代が出ないケースで、実際に残業代を請求できるかどうかは、それぞれの雇用契約の内容によっても異なるので、ご不明な場合は専門家に相談してみるとよいでしょう。

2.残業代が出ない場合に保存しておくべき証拠とは

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残業代を請求するときに最も大切なもの、それは「残業をしたことを示す証拠」です。
この証拠が不十分だと、裁判を起こして残業代を請求しても認められない可能性が高まります。在職中に集められる証拠が多いので、今すぐ退職して請求しようと考えている方だけでなく、いつか請求しようと考えているという人も参考にして下さい。

以下では、在職中にぜひ保存しておいてほしい、5つの具体的な証拠をあげて紹介したいと思います。

①タイムカード・勤怠記録など

会社は、労働者の労働時間を、タイムカードの記録や日報等で把握しているケースが多いです。これらがある場合は、タイムカードや日報のコピーを取っておきましょう。
タイムカードを利用していない会社では、何時まで会社でパソコン作業をしたと証明できるように、パソコンのログを取得しておくことをおすすめします。

また、会社の入退室でIDカードなどを利用している場合でその履歴を個人でみられるようであれば、プリントアウトしたりスクリーンショットをとるなどして保存しておきましょう。

②業務用メールの送受信履歴

送受信の記録が残るメールは、残業時間を証明する証拠として効果があります。
特に送信メールの履歴はその時間まで会社で仕事をしていたことを証明できるので記録を保管しておきましょう。

③ネット上のカレンダー

インターネット上のカレンダーで業務内容を記録している場合は、これもスクリーンショットを取るなどして保存しておくと、業務時間を証明する証拠として利用できます。

④日記

日々の日記に始業・終業の時間を書いたり、業務内容を書いている者は、残業したことを証明する証拠として採用される場合があります。
ある特定の日だけ書いても効果が薄いので、毎日日記を付ける習慣をつけておくとよいでしょう。

⑤タクシーの領収書

残業で終電を逃してタクシーを利用した場合は、タクシー料金を支払う際に領収書をもらっておきましょう。
自動印字される領収書では時間が記載されるので、退社時間を証明する証拠として利用できます。

3.残業代に含まれる労働時間8種類

上記で、働き方別に残業代が請求できるかをご説明しました。ここでは、仕事内容別に、残業代が出る労働時間かどうかをご説明したいと思います。
残業代に含まれるの「労働時間」とは、「使用者(経営者など)の指揮命令下に置かれていた時間」のことを言います。

以下では労働時間の具体例をご紹介しますが、「こんな時間も残業代の対象になるの!?」「先にタイムカードに記録させられていた」など、予想外の時間もあるかもしれないので、ぜひチェックしてみてください。

  • 準備時間
    制服や作業服などがある場合に着替える時間、朝礼や体操がある場合の時間などです。
  • 後始末時間
    制服などから私服に着替える時間や、掃除などに要する時間をいいます。
  • 休憩時間
    休憩時間中に来客対応や電話対応をした場合には、その時間は労働時間に含まれます。
  • 待機時間
    運搬業の方などが、荷待ちに要する時間などをいいます。
  • 仮眠時間
    医療関係や警備関係の仕事についている方などが緊急事態に備えて仮眠する時間です。
  • 仕込み時間
    飲食店などで、開店前の準備や昼と夜の間の仕込みに要する時間も含まれます。
  • 研修
    会社の指示で参加した研修は、労働時間に含まれます。
  • 自宅作業
    会社の指示で自宅に持ち帰って作業した時間は労働時間として扱います。

4.退職前?退職後?残業代を請求するタイミングとは

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あなたの中で、残業代を請求するには退職もやむをえないと思っていませんか?実際のところ、残業代を請求する方はほとんど退職後にしていると言われています。

しかし、残業代の請求は在職中でも、退職後でも請求することができます。ただし、残業代を請求するときに気を付けるべき点が違うので、注意が必要です。

(1)退職せずに残業代を請求する場合

在職中に残業代を請求するには、会社との関係をなるべく悪化させない方法で行いたいと思うのが通常です。取り得る請求の方法としては次のようなものが考えられるでしょう。

①個人で会社の人事部などに残業代を払うよう依頼する

会社の人事部がきちんと機能していて、残業代の未払いに気付いていなかったようなケースでは、きちんと会社側に説明することで残業代が支払われることもあります。

②労働組合に相談する

労働組合には、会社個別のものと、同種組織が集まったもの(ユニオン)がありますが、ユニオンは労働者個人のためというより、全労働者の権利のための活動を主な目的とするので、相談するなら会社独自の労働組合が適していると言えるでしょう。

ただ、会社によっては、労働組合の幹部になるのは出世コースと言われるほど会社側寄りの組合もあったり、逆に労働組合と会社の対立が激しく相談しただけで会社との関係が悪化することもあるので、まずは周りの意見を聞いてから相談を検討してみることがおすすめです。

③労働基準監督署に相談する

労働基準監督署は、残業代を請求しても会社が応じないような場合に、是正勧告をする機能があります。
それだけですぐに残業代が出るわけではありませんが、会社としてはイメージダウンになるため、効果がある反面、会社との関係がぎくしゃくする恐れもあります。

(2)退職後に残業代を請求する場合

在職中に残業代を請求するのは、会社との関係が悪化しそうでできないけれど、退職後は残業代が請求できないと思って諦めてはいませんか?

退職後でも、残業代を請求することは可能です。残業代を請求する権利は、退職したからと言って消滅することはありません。
ただし、退職金を請求する権利は、その残業代が支払われるべき日から2年で消滅してしまうので、できるだけ早く請求するように気を付けてください。退職後に残業代を請求するためには、次のような方法を取ることができます。

①内容証明郵便で支払い請求をする

会社に対して、内容証明郵便で、在職中に出ていなかった残業代を請求することで支払いを促す方法です。

②労働審判を申し立てる

労働審判は、裁判官と労働問題の専門家を交えて、原則として話し合いで解決を目指す手続です。
原則3回以内の話し合いで終了するため、早く解決できるメリットがある反面、複雑な問題については訴訟をしなければいけないデメリットがあります。

③民事訴訟を行う

審判でも解決しなかった場合は、訴訟、つまり裁判に移行します。
最終解決ができ、請求額に加えて付加金というペナルティ金額も認められる可能性がある反面、半年から1年程度は時間を要するため負担が大きいという側面があります。

5.残業代が出ない場合に相談できる6つの窓口

残業代が出ないけれど、会社の人には相談しにくい場合、次のような相談場所があります。

(1)労働基準監督署

労働基準監督署は、各都道府県にあり、会社が法令を順守しているかを管理すると同時に、労働問題については捜査や逮捕もできる機関です。
残業代が出ない場合も相談できますが、会社が明らかに法律違反をしていないと介入できないので、直接的な問題解決繋がりにくいこともあります。

(2) 労働局雇用均等室

労働局雇用均等室は、各都道府県の労働局にあり、事業主(会社)と労働者間のトラブルがあった場合に解決を支援する機関です。
主に、男女雇用機会均等法や育児・介護などに関係する問題や助成金制度などを中心に扱っているため、残業代については育児や介護の問題がある人が対象になりやすい特徴があります。

(3)全労連労働問題ホットライン

全労連労働問題ホットラインとは、全労連という組織が運営する電話窓口で、残業代の問題だけでなく、セクハラや不当解雇など様々な相談に対応しています。

(4)総合労働相談コーナー

総合労働相談コーナーは、各都道府県にあり、残業代を含む賃金や解雇などの労働問題のサポートをしたり、トラブルを避けるための情報提供など、労働問題のあらゆるテーマの相談に対応する機関のことです。

(5)社労士

社労士は、労働や年金の問題についての国家資格者で、残業代を含む会社の労働問題を広く扱っています。
残業代について会社と従業員間でトラブルになった場合は、間に入って迅速な解決を図ることができますが、裁判になった場合は代理人になれないので注意が必要です。

(6)弁護士

弁護士は、法律全般の専門家として、残業代の請求をはじめとして、あらゆる問題を扱うことができます。
交渉はもちろん、残業代を巡って裁判になりそうな場合は、代理人として出廷してもらうなど、相談できる内容に制限がないというメリットがあります。

6.残業代を請求しても会社が払わない場合に取るべき対応

残業代が出ない場合に裁判を起こし、最終的に会社に支払いを求める判決が出たのに、それでも残業代を払わない会社もあります。

このような場合は、会社の財産(債権、不動産など)を差し押さえて強制的に残業代を支払わせる「強制執行」という方法を取ることができます。
ただし、強制執行を行うには、きちんとした根拠に基づいて、法律で決められた手続きを取らないと、逆に従業員の側が法律違反や、場合によっては刑事事件の問題に発展することもあるので、強制執行を検討する場合は弁護士に相談することをお勧めします。

まとめ

今回の解説では、残業代が出ない場合の対処方法をご紹介しました。
今すぐ残業代を請求することは考えていない、今残業代を請求して会社と揉めて退職を余儀なくされるのは困るという方も、在職中から用意できる証拠の収集など、取れる対応は多くあります。

残業代の請求は、きちんと準備をして請求することが成功のポイントなので、残業代請求でお悩みの方は、一度弁護士などの専門家に気軽に相談してみてはいかがでしょうか?

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