セクハラ被害を慰謝料請求したら相場はどのくらいになるのか?状況別に分かりやすく解説
2018/04/16
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会社でセクハラを受けたとしても、ほとんどの人が我慢してしまいます。
それは、職場での関係を壊したくない心理からですが、はたしてその職場は適切なのでしょうか?
自分だけ我慢して勤務するなら、それはもはや円満な職場とは言えず、嫌だと感じる言動には慰謝料を請求しても良いくらいです。
それでも、慰謝料請求には少し抵抗を感じるのも確かでしょう。
セクハラ被害は、受ける側の感じ方で全く異なるため、ある人にとっては被害でも、ある人にとっては何でもなかったりします。
したがって、慰謝料に相当するセクハラかどうかは、客観的に判断されなくてはなりません。
しかし、人によって感じ方が違う以上、自分の受けたセクハラでも慰謝料が出るかどうかの判断は難しく、この記事ではセクハラを状況別に捉えて相場を解説しています。
セクハラ被害は慰謝料請求ができます
セクハラ被害に対する慰謝料請求は、セクハラで受けた精神的苦痛に対する損害賠償を根拠とします。
ところが、精神的苦痛は本人しかわかりませんので、第三者からみてどのくらいの慰謝料が相当であるかは判断ができません。
個人差がある問題だけに難しいのですが、はっきりしているのは、当事者がセクハラだと訴えるだけで、全て慰謝料が認められるわけではない点です。
状況・経緯などを踏まえ、常識に照らし合わせて、許容限度を超えている言動が必要とされます。
セクハラに該当するのか?を判断するにはセクハラ認定される言動と行動一覧でも詳しく解説しています。
慰謝料の対象となるもの
セクハラを訴えた裁判は数多くあっても、何をしたら慰謝料の対象になるという基準はなく、個別の状況で判断されます。
強制わいせつに該当するような、犯罪が成立するほどの重いセクハラは、違法性から明らかに慰謝料の対象です。
しかし、誰に聞いても「そのくらいで…」と思ってしまうような、例えば食事に誘われただけでセクハラだと訴えても、慰謝料を勝ち取るのは難しいです。
その場合でも、断っているのに何度も誘われた、職務上の地位を利用して強要されたなどあれば、精神的苦痛が大きいとして慰謝料が認められるケースもあるでしょう。
このように、セクハラの慰謝料は言動以外にも状況が大切で、重いから軽いからといった判断だけでは見誤るので注意したいところです。
慰謝料の相場はどれくらいになるのか?
自分の受けたセクハラが、慰謝料に該当しそうなケースだと仮定して、慰謝料はどのくらいになるのでしょうか?
個人が受けた精神的苦痛を量る方法がない以上、事例や状況に応じた過去の判例から相場が形成されていきます。
同じような言動によるセクハラを受けても、ある人は思い悩むのかもしれませんし、ある人は精神科や心療内科に通院するほどショックを受けるかもしれません。
したがって、以下に示す相場はあくまでも大まかな金額でしかなく、実際には変わる可能性があることは予め承知しておいてください。
軽微なセクハラの場合
性的な言葉だけでも十分にセクハラになるとはいえ、不快な思いをした程度の軽微なセクハラでは、訴訟まで発展することは少なく、相手や会社との示談になるケースが多いです。
相場としては10万円~30万円程度で、セクハラをした側に会社から何らかの処罰があるとしても、二度と起こさないと誓約させ勤務は継続させるでしょう。
被害者にしても、退職は避けたいので示談に応じ、問題を大きくせずに解決するパターンが多いです。
休職・退職に至らなかった場合
差別的な内容や、人格否定に繋がる発言、わいせつ行為などの重いセクハラをされても、被害者にとっては生活がかかっているので、簡単に休職・退職とはいかないはずです。
それでも、我慢の限界になれば訴えるべきで、慰謝料の金額も増えます。
何をされたかによりますが、50万円~100万円程度までは考えられ、心的外傷が大きく、医師の診断書などを提出できれば、もう少し増えるかもしれません。
休職・退職した場合
セクハラを原因として休職・退職に追い込まれた場合、その事実は重く受け止められ、慰謝料は100万円を超え、事案によって数百万円にまで達することもあります。
強要された休職・退職なら当然のこと、自主的な休職・退職でも原因がセクハラであるかどうかです。
金額が高くなる理由として、セクハラによる精神的なショックが大きい点の他に、セクハラがなければ休職・退職しなかったのですから、本来得られたであろう給料等の利益(逸失利益といいます)が考慮されるからです。
強姦や強制わいせつなど悪質な場合
セクハラが犯罪を構成するほど悪質なら、もはやセクハラの範囲には収まらず、刑罰の対象になるので、そのような場合は警察へ被害届を出しましょう。
もっとも、警察に届け出たとして、犯罪として立件されるかどうかは検察官の判断ですから、必ず罰せられるとは限りません。
また、仮に刑罰に処されるとして、被害者としてはそれだけで納得せず、民事で慰謝料を同時に請求していくべきです。
その場合、100万円程度から場合によっては1,000万円を超える慰謝料も考えられ、もちろん悪質性が高いほど高額の慰謝料が認められます。
ちなみに、犯罪に該当する場合でも、被害者が訴えなければ何も起こらず、こうした犯罪を親告罪と呼びます。
親告罪では誰か他の人からの告発ではダメで、原則として被害者から告訴される必要があります。
女性からの被害届では女性警察官が対応してくれるなど、一定の配慮はありますが、刑事裁判になって証言を求められると、口に出すのも嫌なことを言わなくてはなりません。
社会全体が変わってきてはいますが、まだまだ現場レベルでは不十分なのが現実です。
まずは拒絶と職場への相談を
自分がセクハラを受けたと訴えるためには、対象になる言動がセクハラに該当するかどうかの客観的な判断を要します。
しかし、何度も説明してきたように、セクハラは人によってセクハラではなくなり、同じ言動が他の人なら許せる場合もあります。
そのため、慰謝料請求をする際には、相手への拒絶があること、第三者への相談により他の人も知っている事実であるほうが、より有利に戦えます。
中には話すのが恥ずかしい内容もあるかもしれませんが、我慢し続けないで勇気を持ちましょう。
はっきりと拒絶しなければならない
セクハラ被害を受けたら、絶対にしなくてはならないのが相手への拒絶です。
我慢していたけれども、実は嫌だったと後から言っても、その信憑性を問われてしまいますが、拒絶した人に対し、性的な関係を強要したり、侮辱的な言葉を続けたりすることは、重大なセクハラとして認定されるからです。
何も行動を取らないと、我慢していたのか黙認していたのか区別が付きにくいです。
本当は我慢していたのに、口や態度に出さなかったため黙認と受け取られると、怒りのやり場がない悲しい結末になるかもしれません。
そして肝心なのは、セクハラをしてくる相手は、自分がセクハラしているという自覚のない人が多いことです。
嫌がらせや性的・支配的な欲望を満たすために、自覚してセクハラしているよりも、相手が傷ついているとまで感じないで、セクハラを続ける人が多いのは、日本の社会がそれだけセクハラに寛容で、今もその傾向があるからでしょう。
はっきりと拒絶し、その言動をやめてもらうように伝えなければ、こうした人は何度でもセクハラを繰り返します。
拒絶されないで繰り返されるセクハラと、拒絶されても繰り返されるセクハラでは、その重さが異なってくるのは確実です。
上司や会社に相談する
職場に信頼できる上司がいれば相談、上司にセクハラを受けているなら、さらに上司や会社に相談してみることです。
事情が事情だけに、相談先はできれば同性のほうが好ましいでしょう。
また、大企業になると専用の窓口を設けている場合もあります。
相談を受けた上司や会社としては、セクハラの被害を訴えただけで、全面的に信用することはできないので、当事者から事情聴取して、事実認定と改善のための措置、当事者間の和解に向けて間に立つことになります。
その過程においては、セクハラが明るみに出る場合もあれば、相手が完全否定してくるかもしれず、相談したから全て解決するとは限りません。
それでも、誰かに相談することは、セクハラで悩んでいる状況を第三者に知ってもらい、慰謝料請求にとっても大切なステップなので、1人で抱え込まないようにしましょう。
雇い主は被害者の相談を放置してはいけない
男女雇用機会均等法第11条には、労働者からのセクハラ被害に対して事業主が相談に応じ、適切な対応をするための体制を整備して、必要な措置を講じなければならないと定められています。
文言が「措置を講じなければならない」なので、これは事業主が負う義務であり、守らなければ指導や勧告の対象となります。
法律上も、会社はセクハラ被害や被害者からの相談を放置することはできません。
このような法律があっても現実に守られているとは限らず、小規模な会社では経営者自身がセクハラをして誰も不満を言えないなど、実態は追い付いていないのですが、セクハラを放置すると、会社も損害賠償を請求される可能性があり、最近では対応が良くなっているようです。
職場に期待できず、弁護士への相談も敷居が高いと感じる場合
職場の誰も信用できず、もはや自分しか信じられない状況なら、会社にいくら相談しても無駄です。
その場合は、外部機関にも相談窓口が用意されているので、一度は相談してみることを勧めます。
例えば、都道府県に設置された労働局には、雇用均等室という組織があり、労働相談を専門に扱っています。
しかしながら、雇用均等室は各都道府県に1つしかないので、基本的に都道府県庁所在地でしか利用できません。
それでも、労働局の出先機関に該当する、総合労働相談コーナーという相談先が、主な都市ごとに設置されているので、まずは相談だけでもしてみたらどうでしょうか。
総合労働相談コーナーの多くは、労働基準監督署内にあります。
まとめ
セクハラ被害での慰謝料請求は、一方だけの主張では成り立たず、セクハラが人のいないところで行われやすい性質もあって、なかなか難しい問題です。
慰謝料の相場も、損害の大きさに基準がないため、どうしてもあいまいです。
しかし、我慢して勤務を継続するよりも、慰謝料を取ってケリをつけるのも1つの考えで、拒絶しても体を触られたり、関係を強要されたりするケースでは、弁護士など専門家に相談して慰謝料請求したほうが良いでしょう。
裁判にまで発展すると、弁護士は代理人として法廷に立ってくれますから、裁判所まで出向いて嫌な思いをする必要はありません。
それだけでも、弁護士への依頼には意味があり、相手の顔も見たくない多くのセクハラ被害者は弁護士に依頼しています。